【第4話】「ブチ抜き面接トレーニング!」

━━━━前回までのあらすじ

レオナルから紹介されたバーのマスターであるゴブ美のおかげで「自己分析のコツ」を掴んだダイスケ

「もう面接なんて余裕じゃん!」

という気持ちが芽生え始めたダイスケ。

しかしまだまだ先は遠い。

自己分析を終えたダイスケは本当に面接に強くなったのか?

ゴブ美は生涯独身として生きていくのか・・・!?

物語はフライドオニオンのように飛躍していく!!

 

 

 

 

 

 

・・・頭がガンガンする。

一体あの後、バニーガールとカクテルを何杯飲んだのか記憶に無い。
疲れもあったせいか、バーのカウンターで突っぷす形でどうやら眠ってしまったらしい。

 

しかし、身体も瞼も重い。
もう少しだけ、もう少しだけ寝よう。

 

 

 

あれ?

ここは一体・・・。

 

 

照りつけるようなアスファルト。
縦横無尽に行き交う人々。

俺はスクランブル交差点のど真ん中で呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━大学4年生の夏。

周りの友人が全員内定を貰って卒業旅行を楽しんでいる最中。
俺はただ一人、リクルートスーツを汗だくにしながら、就職活動を続けていた。

 

 

 

 

誰かからメールが届いた。
期待と不安を抱えながら、メールを開いてみる。

 

 

・・・。

 

またダメだったか。

 

幾度となく落ち続ける面接。

8月には就職先が見つかり、大学生活最後の夏を謳歌する予定だったが、全く受かる気配がない。

 

このままじゃマズイ・・・。

 

舐めていた。
流石に何十社と受ければ、どこかしらには受かると思っていた。

 

しかし、現実は厳しい。
ぶっつけ本番で受け続けた結果が、この様だ。

 

ならば・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は大学にあるキャリアセンターを、生まれて初めて頼ることにした。
周りには、自分と同じようなリクルートスーツ姿の学生が、熱心に職員に進路を相談していた。

 

(なーんだ。まだ就活終わってない奴も結構いるじゃん♪)

 

 

悪趣味だと自覚しつつも、近くのソファに座りながら、周りの就活状況を盗み聞きすることにした。

 

 

 

 


学生A「今からインターンって遅いですかね?」

職員A「まだ君は”3年生”だから大丈夫だよ。秋のインターンに向けて頑張りましょう。」

学生B「インターン先から内定が出たんですけど、承諾するか迷ってて・・・。」

職員B「うーん、”就活本番”の本命企業を受けるまでキープしてみたらどうかしら?」


 

 

 

━━━なんと自分と同じく苦戦してる”就活仲間”だと思っていた彼らは、就活本番が始まる前の”大学3年生”だったのだ。

 

(やべぇ・・・。俺と同じ大学4年が一人もいないぞ・・・。)

 

相当焦った。
しかし、焦ってもしょうがない。

勇気を振り絞って、キャリアセンターの職員に話しかけてみることにした。

 

あのう。
すみませーん。

 

はーい!どうしました〜?

 

全身から優しいオーラが滲み出てる女性がこちらに向かって微笑んできた。

 

あの、模擬面接をして貰いたいんですけど・・・。

 

良いですよ!是非頑張りましょう!

 

透き通った色白の肌に、上品なシャンプーの匂い。
そして、コミュ障全開の自分に対する気遣いと立ち振る舞い。

 

(この女性、間違いなく・・・)

 

 

今まで受けた面接の担当者は、いかにも粗探しをしてくるような印象や圧迫感があって、萎縮して上手く話せなかった。

しかしこんな天使が面接官だったら、自分をもっと上手く表現出来る気がする。
いや、この人と毎日練習をしたら、必ず受け応えが上達するだろう。

勝利への青写真を見据えて、模擬面接に臨む━━。

 

 

では、まずは自己紹介をお願いします!

 

ははっhは、はい。あ、あの、あああアノニマス大学経営部経営学科から来ました、ととと戸塚ダイスケと申します。えっと、あああのー、大学時代は、しょしょ書道サークルに入っていました。

 

━━現実はいつだってリアルで、ハードだ。

 

・・・そうなんですね!
じゃあ学生時代に一番頑張ったことを詳しく教えてください。

は、はい!!
がが学生時代頑張ったことは、

書道です。えええええっと、毎日、じゃなくて週3の活動で、うう美しい字を書くとか、ああ、あ、あと後輩の指導的なことを。

じゃなくてすみませんんんん。あ、え、あ、えええっと・・・。

 

 

 

 

━━━言葉が出てこない。

一度つまずくと思考がまとまらず、手のひらから汗が止まらない。
全身の筋肉が萎縮し、心臓の音だけが脳に響く。

内定を貰うまで、一体何度こんなことを繰り返すのだろう━━。

 

えええええっと・・・。

こ、答えがまとまってないので、出直して来ます!!!!

 

あ、ちょっと!!

 

 

 

 

 

 

なんてこった。
せっかく優しく対応して貰ったのに、逃げ出してしまった。

また一人で1からやり直しだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

━━━その後、俺はキャリアセンターに足を運ぶことは無かった。

 

 

俺の就活活動が終わったのは、卒業間際の3月。

藁にもすがる思いで受けたブラック企業から、ギリギリ内定を貰えて、不本意ながら幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・なるほど。
ダイスケはコミュ障なんだな!

 

気がつくと俺は、仰向けで床に倒れていた。
過去のトラウマを思い出したせいで、動悸がハンパない。

 

・・・当たってますけど。
ストレートに言われたら、俺でも傷つきますよ。

 

大丈夫だ。恥ずかしがることではない。
人は誰しも、初めから全てのことを上手く出来る訳ではないのだからな。

 

レオナルは葉巻を吹かしながら、こちらを一瞥する。

 

ダイスケは、人前で失敗するのが恥ずかしいのだろう?

 

 

 

 

さっきの夢を、まるでその場で見ていたかのような、それでいて人間性を捕らえた的確な指摘だった。


確かに一人でスマブラや荒野行動などをプレイする時は、いくら負けようが恥ずかしくない。
もっと強くなってやると、逆に闘争心に火がつく。

 

しかし、対人での面接では一回失敗しただけで、とことん凹む。
実際、面接が上手く行かなかった日は、ベットに埋もれて一日中うなだれていた。

 

実は数年前、ダイスケのように、俺に弟子入りしていた奴がいたんだ。
彼も重度のコミュ障ニートだったが、今は一流企業で活躍している。

 

・・・え!?
その人は、どうやって面接を乗り越えたんですか?

 

ふふ、知りたいか?

 

知りたいです!!
もったいぶらないで下さいよ!

 

よし、じゃあ今回は特別に教えてやろう。

 

よろしくお願いします!

 

レオナルが差し伸べてきた手を取に取り、椅子に腰を掛ける。
まだ頭がグラグラする。

 

それじゃあ始めるが、そもそも多くの人は面接というものを勘違いしている。

 

え、そうなんですか!?

 

実は、面接とは自分を売り込む営業なんだ。

 

だから面接に受かりたいなら・・・

 

 

自分を売り込む・・・。

 

そうだ。

そして自分を売り込むのに必要な土台としては瞬発的に答えられる地頭」を鍛えること重要だ。

 

どういうことですか?

 

例えばダイスケは、接客してくれる人がどんな人だと安心感がある?

電気屋さん、携帯ショップ、保険の営業とかなんでもいいぞ。

 

そうですね・・・。

なにか質問した時に、的確にすぐ答えてくれる人・・・ですかね?

 

なるほど、その通りだ。

回答内容が的確であるのは大前提なんだが、レスポンスまでの時間が早ければ早いほど「この人すごい!」とカリスマ性を感じてしまうんだ。

 

そしてそのカリスマ性が「この人なら、全て任せて大丈夫だろう」といった安心感に繋がる

 

逆に上手く答えられない人には「本当に大丈夫かなあ」って不安になっちゃいますもんね。

 

そうだ。

相手を不安にさせないためには事前の準備」とても重要なんだ。

 

例えば、どんな準備をしたらいいんですか?

 

特に重要なのは、相手の質問を想定して、先に答えを作っておくことだ。

「段取りを制すものが、この世を制す」と言っても過言ではない。

 

この世を・・・ですか?

 

そうだ。

例えば、スティーブ・ジョブズは、一度のプレゼンに対して、本番と同じリハーサルを前日に二度行っていた。

そしてリハーサル前には、鬼のような練習を幾度となく重ねている。

 

え、あの有名なジョブズでもそんなに練習してたんですか!?

 

観客が湧いた時と、湧かなかった時など、どんなパターンが来ても成功出来るようにセリフを考えて、それを何度も練習していたらしい。

 

だからこそ、心に余裕が生まれ、その自身が世界中の人の心を魅了したんだ。

 

意外ですね。

天才と言われてるジョブズでも、そんな努力をしてたなんて知らなかったです・・・。

 

・・・そこでだ。

この段取り力は、営業でも全く同じことが言える。


そのためには以下のように

「相手の反応を仮説し、それに対する答えを用意」することが重要なんだ。

 

「分岐シナリオ」を用意せよ

 

つまり、どんなパターンが来ても打ち返せる力を養うことが大切なんだ。

 

なるほど。イメージ出来ました!!

 

営業も面接も本質は一緒で、どれだけ準備が出来たかが勝負の鍵なんだ。

 

 

だからダイスケも、あらゆるパターンの台本を作って、反射的に打ち返せるようにトレーンニグを積もう。

 

んーなるほど。

 

でも自分には少し納得いかない部分があった。

 

でも・・・ガチガチに台本を作ってノータイムで返答したら不自然・・・というか、面接官から胡散臭く思われないですか?

 

確かにそうだな。

 

ですよね!

面接官からしたら、作り込み過ぎた人より、素っぽい人の方が、裏表がなくて、安心して一緒に働きたいなと思うような気がします。

 

・・・もっともだな。

 

だから、練習のし過ぎはよくないと思いま

 

甘い!!

 

!?

 

確かにダイスケの指摘通り、完璧過ぎる自分を見せるのはよくない。

だから面接では、あえて「不完全な自分を演出」することが重要なんだ。

 

 

不完全な自分・・・だと!?

 

面接官の質問に対して、ノータイムで返答をすると

 

面接官「こいつ、回答を用意して来やがったな・・・。

じゃあ、用意してなさそうな質問をして素をあぶり出してやろう。」

 

→予想外の質問が回答できず、死亡。

 

このような流れになる。

 

ですよね!!

 

だからこそ、面接ではその場で考えてるように演出」することで、面接官の不安を取り除いてあげるんだ!

 

能ある鷹は爪を隠すですね!

 

いや、大は小を兼ねるだ!

 

(似たようなもんだろ・・・。)

 

では今から台本作りをするぞ!

 

はい!

 

━━それからバーに寝泊まりしながらの、地獄の台本作り合宿が始まった。

レオナルに貸して貰ったmac bookで、必死に台本を書き上げる。
プリントアウトして読み上げて、違和感を感じた言い回しはどんどん修正する。

そんなことを繰り返して、3日が過ぎた━━。

 

 

 

 

 

ところで台本を作り大方終わったと思うんですけど、どうやって面接練習をしたらいいんですか?

大学時代、キャリアセンターでの模擬面接ですら上手く行かなくて、結構トラウマです・・・。

 

大丈夫だ。安心しろ。

ダイスケのように、模擬面接を苦手とする人は非常に多い。

 

え、そうなんですか!?

 

確かに失敗を恐れない人も中にはいるが、ほとんどが失敗を恐れて模擬面接にすら行かない人が多いんだ。

 

あ、確かに自分の周りで模擬面接に行った人は、いなかったような・・・。

 

 

だろ?みんな失敗が怖いんだ。

だから模擬面接に行って、強くなろうとしただけダイスケは偉いぞ。

 

数年振りに褒められ、目頭が熱くなった。

 

でも俺、失敗して、それが恥ずかしくて逃げちゃいました・・・。

 

だからダイスケのように、人と練習をするのが苦手な人は「俺が作ったツール」を使えば、必ず苦手を克服出来る。

 

 

そう言うとレオナルは高速でURLを打ち込み、とあるサイトを見せてきた。

 

こ、これって・・・!?

 

 

これは・・・面接練習動画だ!!

 

!?

 

レオナルが見せて来た画面には、こちらを向いたレオナルが写っている。

この中には、様々なジャンルの想定質問を収録した動画が、鬼のように収録されている。

 

・ニート、フリーター、短期離職者など社会的弱者に対する質問。

・職種や業界ごとに特化した質問。
・1次面接、2次面接、最終面接など場面ごとの頻出質問。

 

これを網羅すれば、どんな企業の面接にも勝てるというツールなんだ。

 

す、すげぇ。
どうやってこの動画を使えばいいんですか?

 

基本は千本ノックと同じだ。

 

再生すると質問が飛んで来るから、それを永遠と打ち返す。

ただそれだけだ。

 

 

千本ノック・・・。

 

 

 

 

ただこの修行をやる時の注意事項が一つある。

 

どんな注意事項があるんですか?

 

それは・・・練習の最中に「答えをアップデート」することだ。

 

アップデート・・・ですか?

 

そうだ。

例えば、練習をする前に台本を作ったと思うが。

 

実際に面接の流れで声に出すと、台本よりも説得力のある論理構造や心に響く言い回しが出てくることがある。

 

それを忘れぬうちに必ずメモに残して置くんだ。

 

じゃあ手元にPCやスマホやノートは必須ですね。

 

その通り。

アイデアは一期一会だからな。

 

そう言うとレオナルは、ワインを煽りながら自慢気に昔話を始めた。

 

実際この動画を使って、ニートだった元オレの弟子が2ヶ月で一部上場企業から内定を貰ったんだ。

 

え、そんなことってありえるんですか!?

 

十分ありえる。

あいつもダイスケのように面接が苦手だったんだが、この動画を死ぬほど使ってトレーニングしたんだ。

 

当たり前だが面接は余裕でスルー。

そしてコミュ力に自信が付き、トップクラスの営業成績を叩き出した。

 

 

え、営業マンとしても活躍出来るようになったってことですか?

 

そうだ、面接とは自分という商品を売る営業だ。

だから本質は、面接も営業も一緒。

 

面接の勘所が分かるようになれば、おのずと営業力が高まる。

 

なるほど・・・。

ちなみに彼はどれくらい練習をしてたんですか?

 

1日4時間だ。

 

え、4時間も!?

 

そうだ、それだけの時間を費やしたからこそ、短期的にコミュ力が上がったのだ。

 

でもそれだけの時間どうやって捻出し・・・あ!!ニートだから余裕なんだ!!

 

そうだ。ニート期間は使いようによっては、一生を覆す武器になる。

圧倒的に練習を積むことで、圧倒的な自信がつくのだ。

 

・・・俺、この動画を使って、圧倒的にコミュ力を上げます。

 

レオナルの話を聞いて、今までのゴミみたい人生に終止符が打てるような気がして、並ならぬやる気が出てきた。

 

その意気だ。ダイスケよ。

 

じゃあ俺は用事があるから、この世界をしばらく離れる。

またな!

 

え、ちょっ!!

 

レオナルがバーから出て行ってしまった。

 

・・・ぁ、これは一人で頑張るもんだし、レオナルが帰ってくる前に最強になってやるぜ!!

 

そして台本作りに引き続き、俺の面接練習生活が幕を開けた━━。

 

 

 

 

 

御社を志望する理由は・・・!!

 

ある時は食事を取りながら。

 

私の強みは・・・!!

 

ある時はお風呂に入りながら

 

前職の退職理由は・・・!!

 

ある時はトイレに入りながら━━。

 

 

 

レオナルに言われた通り、とにかく面接練習を繰り返した。
寝る時間以外は、ずっと面接練習に時間を費やしたと言っても過言ではない。

そのお陰で、スラスラ言葉が出てくるようになるまで、2週間も掛からなかった。

 

1問1問に魂を込めて、回答を考える。
何度も答えを口ずさむと、答えが身体の中に刷り込まれる。

 

声の抑揚や表情にも気を配る余裕が出来る。楽しい。楽しいから続く。
これが勝ち組の感覚って奴か・・・!!

 

俺は夢中になって面接練習動画をやり込んだ。

 

 

1ヶ月前と、だいぶ顔つきが変わったわね。

心なしか髪もツヤツヤね。

 

ありがとうございます。

俺、今めっちゃ自分に自信があるんですよ。

 

面接練習動画で答えられない質問が無くなって以来、どこからか圧倒的無敵感というか絶対的な自信が湧いてきた。

 

今なら俺、どこにでも受かりそうです。

 

以前の自分からは想像も出来ないような発言。
すでに人生の勝者であるかのように、明らかに気分は高揚していた。

 

バニーさん。
俺、早く面接が受けたくて仕方がないんです!

 

 

 

確かにあれだけ頑張ったものね。

自分の力を試してみたくなるわよね・・・!!

 

だから俺・・・現実世界に戻って、面接受けてきます!!

今までありがとうございました!!

 

え、ダイスケ君!!ちょっと・・・!!

 

俺は頭を下げて、渋谷駅の方に向かってバーを飛び出した。

”あの場所”に行けばなんとかなるはず・・・!!

 

根拠のない自信が、俺を突き動かした━━━。

 

 

 

 

 

 

 

渋谷駅に着くと、この世界への入り口となった緑色の電車が佇んでいた。

 

これに乗れば、現実に戻れるはず・・・!!

 

高鳴る鼓動、震える足。
レオナルにはきちんとお別れは言えて無いけど、俺、現実に戻るよ。

そして、無事に内定を貰ったらちゃんとお礼を言いにこの世界に戻ってくる・・・。

 

スゥ・・・。

 

1ヶ月間、ありがとうございましたぁぁぁぁああああ!!!

 

誰もいない渋谷の街に向かって力の限り叫び、勢いに任せて電車に飛び乗った。

はたして俺はこの1ヶ月で本当に強くなったのだろうか?
いや、それを確かめるために現実世界へ戻るんだ。

 

やってやる。
俺はもう昔の俺じゃ無い。

 

きっと幸せな未来が待ってる。
そして内定を貰ったら、レオナルに一番に報告しに行こう・・・。

 

しかし、この時の俺はまだ知らなかった。
あの悪夢が再び蘇ることを━━━。

 

次回、人生逆転プロジェクト第5話。
「人生分岐シークレットベース!」

人生逆転プロジェクト COMIP